欧米クラシック・シリーズ第41弾は、半世紀以上に渡るキャリアを誇り、晩年まで職人娯楽映画監督としての生き方を貫いたリチャード・フライシャー監督の、初期作7本をセレクトしてお届けします。
RKOのプログラムピクチャー時代のノワール的色彩の強い小粒な作品群は、のちに大作御用達監督として名を馳せる片鱗をうかがわせるに十分な面白さを誇っています。
今なお、多くのファンを持つこの巨匠の足跡を、この機会に是非辿ってみてください。
例によって複数本割もございますので、ぜひご利用下さい!!
リチャード・フライシャー Richard Fleischer(1916年12月8日 - 2006年3月25日)
アメリカ・ニューヨーク州ブルックリン出身。父親は「ポパイ」などで有名なアニメ作家のマックス・フライシャー、叔父も「バッタ君町に行く」などで知られるアニメ監督のデイヴ・フライシャー。ブラウン大学を卒業後、42年にRKOに入社。ニュース・フィルムを手掛け、46年の“Child of Divorce”で監督デビュー。47年の“Design for Death”でアカデミー・ドキュメンタリー映画賞を受賞した。やがて次第に才能を認められ、54年にディズニーから「海底二万哩」の監督を依頼された。その後はFOXの作品を数多く手掛け、「ミクロの決死圏」、「トラ・トラ・トラ!」、「マジェスティック」など娯楽作品路線で活躍を続けた。06年3月に死亡。
上映期間 12月19日(木)~25日(水)
上映作品(全作品DVD上映)
『ボディ・ガード』Bodyguard(1948年/アメリカ/B&W/62分)
監督:リチャード・フライシャー
製作:シド・ロゲル
原案:ジョージ・W・ジョージ ロバート・B・アルトマン
脚本:フレッド・ニブロ・Jr ハリー・エセックス
撮影:ロバート・デ・グラス
編集:エルモ・ウィリアムズ
音楽:ポール・ソーテル
出演:ローレンス・ティアニー プリシラ・レイン フィリップ・リード ジューン・クレイワース エリザベス・リスドン スティーヴ・ブロディ チャールズ・ケイン
★上司を殴り警察をクビになった刑事マイクは精肉会社の女社長のボディガードに雇われる。誰かに命を狙われてるという社長の警護についたマイクは襲われ、気がつくと自分が殴った上司の死体と車の中にいた。警察の捜査をかいくぐりながら真相究明に乗り出したマイクは上司が精肉捜査官の変死事件を捜査していた事を知り、精肉会社の隠された闇の中に足を踏み入れていく。多くの傑作フィルム・ノワールを手がけたフライシャー初の犯罪映画。広角とクローズアップを組み合わせた巧みな映像感覚などその才気の片鱗が窺える。
上映日:12月26日(木)15時30分~、1月3日(金)17時~
『ニューヨーク大騒動』So This is Newyork(1948年/アメリカ/B&W/79分)
監督:リチャード・O・フライシャー
製作:スタンリー・クレイマー
原作:リング・W・ラードナー
脚本:ハーバート・ベイカー カール・フォアマン
撮影:ジョン・ラッセル
音楽:ディミトリ・ティオムキン
助監督:ロバート・アルドリッチ
出演:ヘンリー・モーガン ルディ・ヴァリー ビル・グッドウィン ヒュー・ハーバート レオ・ゴーシイ ヴァージニア・グレイ ドナ・ドレイク
★夫婦と妻と妹の3人が妹の結婚相手を探しに田舎からニューヨークに出て来て、様々な騒動に巻きこまれ数々のドタバタに会う。毒舌のラジオ&テレビ・コメディアンであるヘンリー・モーガンが主演した唯一の映画であり、フライシャーがRKOからクレイマー・プロに貸し出されて撮り上げたコメディ映画。クレイマー自身の初のプロデュース作品でもある。シーンの出だしをストップ・モーションにし、早送りやスロー・シーンを多用し、英語の台詞に字幕をつけるなどの実験的な手法をハリウッド映画で初めて使った作品の1本である。辛辣ながらも洗練された脚本はカール・フォアマンとハーバート・ベイカー。
上映日:12月27日(金)14時~、1月2日(木)15時30分~
『静かについて来い』Follow Me Quietly(1949年/アメリカ/B&W/60分)
監督:リチャード・フライシャー
脚本:リリー・ヘイワード
撮影:ロバート・デ・グラース
音楽:レオニード・ラープ
出演:ウィリアム・ランディガン ドロシー・パトリック ジェフ·コーリー
★雨の日に犯行を繰り返し、現場に「ザ・ジャッジ(判事)」と書いたメモを残してゆくシリアル・キラー。様々な情報から殺人鬼を執拗に追いつめていく刑事の孤独な戦いを描いたフィルム・ノワール。雨の滴溜りとそこに立つ女の足下を捉えた冒頭のシーンから、ラスト、犯人を追いつめた工場のパイプから落ちてくる水に至るまで、水のイメージで全編が統一され、雨の日しか起らない殺人事件、というストーリー展開に一貫性を与えている。ラスト、工場での銃撃シーンなど、撮影のロバート・デ・グラースが鮮やかな手法を見せる。
上映日:12月26日(木)18時40分~、12月30日(月)15時30分~
『カモ』The Clay Pigeon (1949年/アメリカ/B&W/63分)
監督:リチャード・フライシャー
脚本:カール・フォアマン
撮影:ロバート・デ・グラース
音楽:ポール・ソーテル
出演:ビル・ウィリアムズ バーバラ・へイル リチャード・クワイ
★二年間記憶を失い、ある日、軍の病院で目覚めた兵士(ウィリアムズ)が、自分に捕虜虐待の容疑がかけられている事を知る。東アジアで日軍捕虜収容所にいた頃、食料を横領して多くの兵士を死なせた罪を着せられていることだった。彼は汚名を晴らすため病院を逃げ出し、ロスにいる親友に連絡して協力を依頼し彼のもとに向かう。しかし、そこには大きな罠が待ち構えていた・・・。記憶を失っていた男が自らの無実を証明するため苦闘する、巻き込まれ型の犯罪ノワールで、脚本を『真昼の決闘』『戦場にかける橋』のカール・フォアマンが担当。
上映日:12月27日(金)17時35分~、1月3日(金)15時30分~
『札束無情』Armored Car Robbery(1950年/アメリカ/B&W/67分)
監督:リチャード・フライシャー
製作:ハーマン・シュロム
原案:ロバート・アンガス ロバート・リーズ
脚本:ジェラルド・ドレイソン・アダムズ アール・フェルトン
撮影:ガイ・ロー
出演:チャールズ・マックグロー ドン・マクガイア アデル・ジャーゲンス ウィリアム・タルマン ダグラス・フォーリー スティーヴ・ブロディ ドン・ハガティ
★『ニューヨーク大騒動』の後、立て続けに『ボデイガード』『カモ』『静かについて来い』などのフィルム・ノワールで頭角を現してきたフライシャーの初期代表作。ロスのリグレー野球場近くで現金輸送車を襲撃した強盗団一味のボス、バービスがたまたま通りかかったパトカーの警官の一人を殺した事から状況はにわかに緊迫していく。犯罪者たちが警察の捜査によって次第に追いつめられて行くというケイパーものだが、襲撃そのものを描くことより、犯罪の背後にある犯人たちの動きと仲間うちで巻き起こる不信や疑念、それに肉薄する警察の捜査が独特の小気味よいリズムとアクションで綴られていく。『その女を殺せ』とと共にフライシャーが’50年に撮ったノワールの傑作で、その後の映画人生の転機を告げた作品となった。
上映日:12月26日(木)17時~、12月30日(月)17時~
『替え玉殺人事件』His kind of Woman(1951年/アメリカ/B&W/120分)
監督:ジョン・ファロー リチャード・フライシャー(クレジットなし)
製作:ジョン・ファロー ロバート・スパークス
脚本:フランク・フェントン ジャック・レナード
撮影:ハリー・J・ワイルド
音楽:リー・ハーライン
出演:ロバート・ミッチャム ジェーン・ラッセル ヴィンセント・プライス ティム・ホルト チャールズ・マックグロー マージョリー・レイノルズ レイモンド・バー ジム・バッカス
★ギャンブラーのダンはある日、メキシコで1年過ごせば5万ドルの報酬という謎めいた仕事を引き受ける。フライトの中で知り合った億万長者の歌手のレノアは、メキシコで撮影中の映画俳優マークと結婚するつもりだった。マークとダンは親しくなるが、ダンは次第にレノアに惹かれていく。ある日連邦捜査官がダンを訪ね、アメリカを追放されたギャングが密かにアメリカに帰国するため、似た容姿の人間と顔を取り替える計画が進んでいると告げ、やがて事態は思わぬ展開につき進んで行く。製作のRKO社長、ハワード・ヒューズはジョン・ファローが撮り上げた全編を気に入らず、後半のアクション・シーンなどをフライシャーに依頼して完成させた。映画はは大ヒットし、RKOの歴史に残る1本となった。
上映日:12月27日(金)15時30分~、1月2日(木)18時40分~
『その女を殺せ』The Narrow Margin(1952年/アメリカ/B&W/71分)
監督:リチャード・フライシャー
製作:スタンリー・ルービン
原案:マーティン・ゴールドスミス ジャック・レナード
脚本:アール・フェルトン
撮影:ジョージ・E・ディスカント
出演:チャールズ・マックグロー マリー・ウィンザー ジャクリーン・ホワイト ゴードン・ゲバート クィーニー・レナード デヴィッド・クラーク
★ロス市警の刑事ブラウン(マッグロー)は殺されたマフィアのボスの妻ニール夫人(ウィンザー)を護衛するためシカゴに到着する。彼女は組織の帳簿を所持しており、ロスで行われる裁判に出廷するのためだ。帳簿にはマフィアの裏金の流れが記載されている。ブラウンはニール夫人を連れ立ってロス行きの大陸横断鉄道に乗り込むが、組織は総力をあげて彼女を抹殺しようと仕掛けてくる。列車にはマフィアの殺し屋が紛れ込んでいるが、誰が敵で見方なのかもわからない。シンプルな脚本、スピーディーな展開の中でのスリルと緊張感に満ちたどんでん返しの連続。音楽を一切使わず、列車の汽笛や走る音だけで構成している他、手持ちカメラを駆使した撮影など見るものを釘付けにする。撮影期間13日、予算20万ドルで作られこの作品で、一躍その名を刻んだフライシャーの記念碑的傑作。
上映日:12月26日(木)14時~、1月2日(木)17時~
入場料:1300円均一(当日券のみ)
※2本連続鑑賞2400円 3本連続鑑賞3500円 4本連続鑑賞4500円
欧米クラシック・シリーズ㊶
リチャード・フライシャー監督特集
Copyright (C) 2015 copyrights.cinema novecento All Rights Reserved. © 2015 by Cinema Novecento Films. Proudly created with Wix.com
運営会社:株式会社シネマノヴェチェント 〒220-0051 横浜市西区中央2-1-8 岩崎ビル2F ☎045(548)8712 eメール:info@cinema1900.yokohama