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フィルムノワール傑作選②

 

裏社会に生きる人々や、図らずも犯罪に関わってしまった人々を通して人間のダークサイドを描くフィルムノワールと呼ばれるジャンル、その黎明期、成熟期は1940年代~50年代と思われます。

2月の第1弾に引き続き、この特集では、その時代に製作されたフィルムノワールの代表的作品を24本セレクト、一挙上映します。

巨匠になる前のロバート・ワイズ、ジョン・スタージェス、リチャード・フライシャーら名監督たちによる粒よりの秀作揃い。

観れば観るほど低料金になるスライド制なので、この機会にフィルムノワールの原点たちをたっぷりとご堪能下さい!

 

 

上映作品(全作品DVD上映)

「スキャンダル・シート」 Scandal Sheet (1952/B&W/82分)

監督:フィル・カールソン

原作:サミュエル・フラー(ダーク・ページ)

出演:ブロデリック・クロフオード、ドナ・リード、ジョン・デレク

☆三面記事が売りものの新聞社の編集主幹があるパーティで昔捨てた妻に出くわす。過去の正体をばらすと脅され咄嗟に女を殺し事故に見せかけるが、自分が手塩にかけて育てた部下の敏腕記者がそれを殺人と推測する。部下の推理を否定しきれなかった編集主幹は、事件をトップ記事として取り上げざるをえなくなる。新聞の売り上げが伸びるが、警察の捜査も次第に彼の身近に迫ってくる中、殺人隠蔽のため主幹は新たな犯罪に手を染めていく。社会派的な題材と斬新な画面処理の犯罪映画で50年代を代表するノワール監督となったカールソンの意欲作。

 

「トゥルー・クライム殺人事件」 The Unsuspected (1947/B&W/103分)

監督:マイケル・カーティス

撮影:ウッディ・プレデル

出演:ジョアン・コールフィールド、クロード・レインズ

☆オープニングのシーン。壁を這い回る黒い男の影。自殺に見せかけて自分の女性秘書を殺害した男の顔が磨き抜かれた机の上に映し出される。映画の冒頭から殺人者の正体を明かしていく、大胆な物語進行で撮り上げたマイケル・カーティスの名人芸としか言いようのないフィルム・ノワール。ロバート・シオドマクのノワール傑作『幻の女』『殺人者』などのカメラマン、ウッディ・プレデルが全編を貫く鮮やかなカメラ・ワークでノワールの内面を映し出して秀逸。

 

「替え玉殺人計画」 His kind of Woman (1951/B&W/120分)

監督:ジョン・ファロー、リチャード・フライシャー

出演:ロバート・ミッチャム、ジェーン・ラッセル、ヴィンセント・プライス

☆ギャンブラーのミッチャムはある日、メキシコで1年過ごせば数万ドルの報酬という謎めいた仕事を引き受ける。フライトの中で知り合った億万長者の歌手のラッセルは、メキシコで撮影中の有名俳優プライスと結婚するつもりだった。プライスとミッチャムは親しくなるが、ミッチャムは次第にラッセルに惹かれていく。ある日連邦捜査官がミッチャムを訪ね、アメリカを追放されたギャングが密かにアメリカに帰国するため、似た容姿の人間と顔を取り替える計画が進んでいると告げ、やがて事態は思わぬ展開につき進んで行く。製作のRKO社長、ハワード・ヒューズはジョン・ファローが撮り上げた全編を気に入らず、後半のアクション・シーンなどをフライシャーに依頼して完成させた。映画はは大ヒットし、RKOの歴史に残る1本となった。

 

「影を追う男」 Cornered (1945/B&W/102分)

監督:エドワード・ドミトリク

出演:デイック・パウエル、ミシェリーヌ・シェイレル、ニーナ・ヴァール

☆捕虜収容所から釈放されたカナダ人空軍パイロット、パウエルはフランス人妻を殺した犯人を追い始める。その男がフランスのナチ協力政府ヴィシー政権の役人だと突きとめ、パウエルはスイス、アルゼンチンへと追って行く。アルゼンチンの反ナチ勢力とも手を結ぼうとしない主人公は正義のために動いている訳ではない。ただ私憤に駆られているだけだ。しかし、実は妻とは結婚後わずかしか過ごしておらず、長い時間が経って今となっては顔さえ思い出せない。一方、彼が追う仇の男も正体不明で顔を見たものはほとんどいない。『ブロンドの殺人者』(’44)に続いて同じスタッフ、キャスト(製作、監督、撮影、音楽、美術、主演)で作られた人間の内面に迫る異色フィルム・ノワール。

 

「窓」 The Window (1949/B&W/73分)

監督:テッド・ラズラフ

原作:コーネル・ウーリッチ

主演:ボリー・ドリスコル、アーサー・ケネディ、ポール・ステュアート

☆ニューヨークのアパートで両親と暮らすトミー少年は、日頃から自分の空想した作り話を人に聞かせては両親を困らせていた。ある蒸し暑い夜、外の階段で寝る事にしたトミーは、上の階に住むケラートン夫妻の部屋で起った殺人を偶然目撃してしまう。しかし日頃の言動から誰もトミーの言葉を信用しないばかりか、夫妻に目撃した事を知られてしまい、魔の手がトミーに忍び寄ってくる。ヒッチコックの『汚名』などのカメラマンとして名高いテッド・ラズラフがコーネル・ウーリッチの短編を映画化したもので、綿密な脚本構成と優れた演出力で1949年ベルギー国際映画祭の監督賞を、主演のドリスコルはアカデミー特別賞をそれぞれ受賞した。

 

「武装市街」 Union Station (1950/B&W/81分)

監督:ルドルフ・マテ

主演:ウイリアム・ホールデン、ナンシー・ウィルソン

☆富豪の盲目の娘が誘拐され、誘拐した一味は身代金として10万ドルを要求してきた。ニューヨークのユニオン・ステーションと周辺の駅を舞台に展開する犯罪ドラマで、犯人を追いつめる鉄道警察の保安刑事ホールデンを中心に描かれる。犯人の一人が高架を走る電車を乗り継いで逃げるシーン、その男が牛の集積場で暴走する牛に踏み殺されるシーン、ユニオン・ステーションの地下の鉄道の場面など、視覚的に見応えのあるシーンがテンポよく綴られ、最後まで目を離せない。様々なジャンルの作品を手際よく作り続けたルドルフ・マテの犯罪活劇の力作。

 

「国境事件」 Border Incident (1949/B&W/94分)

監督:アンソニー・マン

撮影:ジョン・オルトン

出演:リカルド・モンタルバン、ジョージ・マーフィ

☆マン=オルトンのコンビが作り上げた初期の傑作『Tメン』(’47)を同じコンビでリメイクしたノワール。舞台はアメリカ=メキシコ国境の町。メキシコから労働者を不法入国させる闇組織を摘発するため潜入捜査する二人の捜査官を描く。国境の山岳地帯を不法に超えようとするメキシコ人たちをギャングが 待ち伏せして殺し、金品を奪い、その死体を底なし流砂に沈めるシーンから始まるこの作品は、同じ底なし流砂の最後のクライマックス・シーンまで、全編、劇的な緊張の連続でノワール色に彩られた傑作。『Tメン』でも見られた一人の捜査管が同僚が殺されるのをみすみす見殺しにせざるを得ないシーンなど、リアルでスリリングなショットは見応え十分。

 

「捕われの町」 The Captive City (1952/B&W/91分)

監督:ロバート・ワイズ

出演:ジョン・フォーサイス、ショーン・カムデン

☆ある地方都市の警察署に緊張した様子で若い男女が駆け込んでくる。彼はとある町の新聞社の編集主幹で、ある件で彼に助けを求めていた男が突然、変死し警察をも巻き込んだ組織犯罪の実態を探り出したのも束の間、組織から追われる身になってしまっていた。1949年から~53年までアメリカ上院で組織犯罪撲滅の委員会が作られ大きなニュースになった結果、ハリウッドでもラングの『復讐は俺に任せろ』(’53)など多くの組織犯罪を描いた映画が作られたが、この作品もその1作。あらゆるジャンルの作品を撮り上げた巨匠ロバート・ワイズがホーグ・レンズという広角レンズを使って全編キュメンタリー・タッチで生々しく描いた佳作。

 

「テンション」 Tension (1950年/B&W/75分)

監督:ジョン・ベリー

出演:リチャード・ベイスハート、オードリー・トッター

☆ドラッグ・ストアを経営する実直な夫は、金持ち男と浮気している我が侭な妻にまだ未練を持ってる。新しい男の元に身を寄せた妻を追いかけ家を訪ねるが、男に暴力を振るわれたことが原因で愛人を殺そうと考える。しかし、傲慢な悪女妻のために殺人を犯す価値はないと気づいた夫は計画を思いとどまる。だが、その男が突然何者かに殺され、その直後、妻が夫のもとに帰宅したことから状況が一変する。警察が訪ねてきて、夫は男の死を初めて知る。そして、二人は刑事の追求を受けるが事態は思わぬ展開を見せはじめる。このノワールの最大の魅力はトッターの悪女ぶり。夫を小馬鹿にし彼女を連れ戻そうとやって来て、男に殴り倒された夫を楽しげに見下す様子など、そのファム・ファタルぶりは際立っている。

 

「危険な女」 The Locket (1946年/B&W/86分)

監督:ジョン・ブラーム

出演:ラレイン・デイ、ロバート・ミッチャム、ブライアン・エイハーン

☆ナンシー・ブレアの三度目の結婚式の日に突然、前夫のブレア医師が現れる。彼は、彼女の過去について旦那のジョンに、ナンシーが自分にどれだけひどい仕打ちをしたかを伝える。ブレア医師の警告にはナンシーの最初の夫である画家ノーマンのことも含まれていた。あるトラウマを持った女が、結婚した二人の男の人生を破滅へと向かわせる内容で、複数回の回想シーンをフラッシュ・バックで見せながら、彼女の心の中の闇を解き明かしていく。’37年にハリウッドに亡命したドイツ出身の監督ジョン・ブラームの異色フィルム・ノワール。

 

「容疑者」 The Suspect (1944年/B&W/85分)

監督:ロバート・シオドマク

出演:チャールズ・ロートン、エラ・レインズ

☆1902年のロンドン。煙草商のフィリップは誰に対しても親切で善良な男だったが、意地の悪い妻コーラとの結婚生活は破綻していた。ある日、職探しで訪ねて来た孤独な女メリーに職を紹介した事から、その後、度々、彼女と会うようになる。フィリップはコーラに離婚を迫るが高笑いされてあしらわれてしまう。頭に来たフィリップは事故死に見せかけ、コーラを階段から突き落として殺害する。ロンドン警視庁のハクスレー刑事は他殺と睨むもフィリップを追求する。だが、証拠が挙げられずいったんは引き下がる。フィリップはメリーに自分が殺人の嫌疑がかけられている事を打ち開けるが、彼女は結婚を望んでいた。やがて二人は結婚するのだが、コーラの死を怪しんでいた隣家のシモンズがフィリップを恐喝してきた事から、事態は思わぬ展開に突き進んでいく。’40年に渡米後、多くのフィルム・ノワールを手がけたシオドマクがコスモポリタン誌に掲載されたジェームズ・ロナルドの小説を映画化した佳作。イギリス出身の名優チャールス・ロートンが主人公フイリップを好演。

 

「落とし穴」 pitfall (1948年/B&W/86分)

監督:アンドレ・ド・トス

出演:デイック・パウエル、リザベス・スコット、ジェーン・ワイアット、レイモンド・バー

☆ロサンゼルスに住む保険会社員のジョン・フォーブスは妻と子供のいる典型的な中流家庭の生活をしている。だが、日々の暮らしのなかで日常にはない刺激を求める“違う自分”がいる事にも気づいている。それは保険金の使い込みの調査を始めた時に出会った、クライアントのデパート店員モナの存在がフォーブスを闇の世界に引きずり込むきっかけとなった。アメリカン・ドリームの裏側の隠された世界を描いた職人監督ド・トス監督の歯切れのいいノワール快作。

 

「高い壁」 High Wall (1947年/B&W/100分)

監督:カーテイス・バーンハート

出演:ロバート・テイラー、オードリー・トッター

☆空軍を退役したスティーヴ・ケネットは、戦争後遺症でひどい頭痛と記憶喪失に悩まされ、自分が妻を殺したと思い詰めていた。妻がウィラードと浮気しているのを知り、彼女を絞め殺そうとするが気を失ってしまい病院に運ばれる。気がつくと死んでいる妻と共に自殺しようとしている自分がいる。スティーヴは、医師アンの麻酔療法によって当時の状況を思い出そうとすが、肝心の部分が曖昧なままで核心に迫れないでいた。『追求』『失われた心』など独自のフィルム・ノワール感覚で問題作を発表したバーンハートの見応えある一作。ポール・ボーゲルのキャメラ・ワークが全編、緊迫感を盛り上げている。

 

「ダーク・シテイ」 Dark City (1950年/B&W/98分)

監督:ウイリアム・ディターレ

出演:チャールトン・ヘストン、リザベス・スコット

☆田舎町で競馬のノミ屋をやっているダニー・ヘイリーが足を洗いたがっているのを薄々感じ、自分が捨てられるのではと恐れている女友達のフラン。そんな時ダニーはロスから仕事でやって来たアーサーとクラブで知り合い、仲間と共に彼をイカサマ・ポーカーに誘い有り金5,000ドルを巻き上げる。だが、他人から預かっていたお金をすってしまったアーサーは、絶望のあまり自殺してしまう。ダニーはアーサーの自殺の責任を否定するが、仲間のバーニーが何者かに殺された事から、ダニーにも魔の手が忍び寄ってくる。自殺したアーサーの偏執狂の兄が、弟の仇を取ろうと画策しているのだった。狂気の復讐鬼から命を狙われる男の闘いを描いたサスペンス・ノワール。主人公ダニー役でヘストンが鮮烈のデビューを果たした他、ファム・ファタル女優として名高いリザベス・スコットがフラン役で出演。

 

「アンダーワールド・ストーリー」 Underworld Story (1950年/B&W/91分)

監督:サイ・エンドフィールド

主演:ダン・デュリエ、ハーバート・マーシャル、ゲイル・ストーム

☆ある地方紙の記者マイク・リースは、ギャングに不利な証言をする証人の存在をすっぱ抜いて掲載したため、証人が殺されマイクは新聞社を頸になる。業界での復活を狙うマイクは、広告主である地方紙が資金の出資を求めている事を知り、その新聞社を乗っ取ろうと顔見知りのギャングから資金を調達する。しかし、彼がその地方紙を訪ねると事件が発生する。新聞社の社長の息子の嫁が、何者かに殺害されたのだ。マイクは密かに犯人は息子だと確信するが、息子は黒人のメイドに罪を着せようとする。マイクはこの事件を利用して、ジャーナリストとしての真実を探求する事より自らの地位と存在を有利にするため動き出す。徹底したリアリズム描写でフィルム・ノワールに独自の地位を築いたエンドフィールドの傑作。

 

「ジョニー・オハラの真実」 The People Against O’Hare (1951年/B&W/102分)

監督:ジョン・スタージェス

主演:スペンサー・トレイシー、パット・オブライエン

☆弁護士ジェームス・カータインは法律の世界から遠ざかっていた。不器用で一途な性格とアルコール中毒が原因だった。しかし、彼は再び法廷に戻ってきた。殺人罪で告発されたジョン・オハラを救い出すために。だが、彼の復帰を喜ばない闇の世界の人間たちも同時に動き出す。『ミステリー・ストリート』(’50)に続くスタージェス・ノワールの佳作。名手ジョン・オルトンが捉えたニューヨークの臨場感溢れる映像は圧巻。

 

「突然の恐怖」 SUDDEN FEAR (1952年/B&W/110分)

監督:デヴィッド・ミラー

出演:ジョーン・クロフオード、ジャック・パランス、グロリア・グラハム

☆莫大な遺産を相続する予定の美貌の劇作家マイラは、新作のオーディションで主演候補の新人レスターを推薦されたが採用しなかった。マイラはサンフランシスコの自宅に戻る列車の仲で偶然レスターと再会する。彼は意外なほど好青年だった。二人は急速に結びつき恋に落ち、そして、結婚する。だがレスターは元恋人のアイリーンとマイラの書斎で密会し、財産目当てに結婚したと告げる。しかし、レスターはそこでマイラの遺言書を発見した事から、事態は予期せぬ方向に走り出していく。アカデミー主演女優賞と助演男優賞にノミネートされたクロフォードとパランスの圧巻の演技が光る傑作ノワール。

 

「マカオ」 MACAO (1952年/B&W/81分)

監督:ジョゼフ・V・スタンバーグ、ニコラス・レイ

出演:ロバート・ミッチャム、ジェーン・ラッセル

☆楽園と犯罪都市の顔をもつマカオへ向かう船上に3人の男女がいた。謎めいたクラブ歌手のジュリーと風変わりな流れ者ニック、そして、旅行会社のセールスマン、ローレンスだ。3人はそれぞれの思いを胸に香港からやって来たが、マカオに上陸した時からこの町の闇の世界に巻き込まれていく。『替え玉殺人計画』(’51)に続くミッチャム=ラッセルの共演作で、夜の波止場での追跡シーンなどノワール・ムード満載のエンターテイメント。スタンバーグ最後のアメリカ映画となったが途中降しニコラス・レイが後を引き継いだ。作品は’50年に完成したが、RKOの事情で公開は’52年となった。

 

「暴力の街」 THE LAWLESS (1950年/B&W/83分)

監督:ジョセフ・ロージー

出演:ゲイル・ラッセル、マクドナルド・ケリー、ジョニー・サンズ

☆大都会の新聞社の記者で権力と闘うのに疲れたラリー・ワイルダーは、小さな町の新聞社の編集者として新たな生活をスタートさせようとしていた。移り住んだ新しい家が気楽で、争いのない暮らしを与えてくれると思っていた。だが、ラティーノ農場労働者の若者が、金持ちの人種差別主義者の若者たちにリンチを加えている場面に遭遇。そのことをきっかけに、ラリーは彼等の権利のために立ち上がろうとする白人は、この町には自分しかいない事に気づく。彼はヒスパニックの労働者向けの小さな週刊紙で働くサニー・ガルシアと一緒に若者たちの命を救おうと奔走する。群衆のルールや理不尽な偏見によっていかに人々の心は揺れ動くのか。’50年代初期に『不審者』『大いなる夜』などのノワールを発表したロージーの見事な手腕により完成された緊迫感溢れる社会派フイルム・ノワール。

 

「女囚の掟」 CAGED (1950年/B&W/96分)

監督:ジョン・クロムウエル

出演:エリノア・パーカー、アグネス・ムーアヘッド、エレン・コルビー

☆19歳で新婚のマリー・アレンは、強盗幇助の罪で女子刑務所に送られた。9ヶ月で仮釈放になる判決だったが、刑務所は想像を超えた非情な場所だった。容赦のない看守や暴力的な女囚たちの言動、ひっきりなしに鳴るベルや鉄格子の音。マリーは万引きで服役しているキティと知り合う。キティはマリーに刑務所で生き残るための知恵をアドバイスしていく。だがマリーは刑務所のひどい状況の中で、小心者の小娘から次第に本物の犯罪者の顔を持つ囚人に変身していく。手堅い作風で知られるクロムウエルが刑務所を舞台に描いたたノワールの傑作。製作のワーナーは当初マリー役にベティ・ディヴィスを考えていたが、彼女が辞退したためエリノア・パーカーが出演。結果的に演技力に定評のあるパーカーがマリーを熱演、ヴェネツイア映画祭で主演女優賞を獲得した他作品はアカデミー賞三部門でノミネートされている。

 

「深夜の歌声」 ROAD HOUSE (1948年/B&W/95分)

監督:ジーン・ネグレスコ

出演:アイダ・ルピノ、リチャード・ウイドマーク、コーネル・ワイルド

☆カナダとの国境近くでボーリング場を併設したナイトクラブを経営する、オーナーのジェフティは親友のピートに店の経営を任せている。ある時、ジェフティはクラブのシンガーとして、タフでセクシーな女リリーを6週間の契約でシカゴから連れて来る。そんなリリーにジェフティはぞっこんになるが彼女はつれない。ある夜ピートが酔客から身を挺してリリーを守った事から、二人は急速に近づき絆を深めてゆく。だがジェフティの心は嫉妬で押さえきれない狂気の顔がのぞかせ始め次第にエスカレート、物語は破局的な局面へと突き進んでいく。二人の男が一人の女に惚れ込んだ事から生まれる憎悪と悲劇を描いたノワールの秀作。監督としても『ヒッチ・ハイカー』などの異色のフィルム・ノワールを手がけているアイダ・ルピノがリリーを好演。前年『死の接吻』の殺し屋役で鮮烈のデビューを飾ったウイドマークが狂気のクラブオーナー役を完璧に演じている。ネグレスコの演出と『アパートの鍵貸します』などの名カメラマン、ジョセフー・ラシェル見事な撮影が印象的だ。

 

「悪魔の往く町」 NIGHTMARE ALLEY (1947年/B&W/110分)

監督:エドマンド・グールデイング

出演:タイロン・パワー、ジョーン・ブロンデル、コーリン・グレイ、ヘレン・ウオーカー

☆職を転々として来たスタントン・カーライルはある町で見世物小屋で働く事になり、偽読心術師のジーナとその夫でアル中のピートと組む事になった。スタントンは以前、彼等が暗号を使った読心術で一斉を風靡した事を聞きつけジーナに二人で組む事を提案するが、ジーナは夫は暗号を絶対教えないという。ジーナは夫のアル中治療のため、その暗号を売って入院させようと考えていたのだ。ある夜スタントンは仲間から酒を買い、ぶらりと現れたピートに酒を渡す。すでに禁断症状がでていたピートはその酒を煽るが、それはジーナがショーで使うアルコールをスタントンが内緒ですり替えたものだった。ピートは翌日、亡くなる。そして二人は暗号を使ったイべントで大人気を博していくが、スタントンの助手としてモリーが現れた事から事態は思わぬ展開を見せていく。口八丁手八丁のスタントンをタイロン・パワーが熱演。『グランド・ホテル』などのグールデイングが人間飽くなき底知れぬ欲望を赤裸々に描いた評価の高い傑作。

 

「ラケット」 THE RACKET (1951年/B&W/88分)

監督:ジョン・クロムウエル、ニコラス・レイ他

主演:ロバート・ミッチャム、ロバート・ライアン、エリザベス・スコット

☆舞台はアメリカ中西部の大都市。マフィアによる犯罪や収賄に危機感を抱くマッキーグ警部は、組織の一掃を計ろうとする。姿を現さない黒幕オールド・マンの存在に脅かされながらも、マッキーグはスラム育ちの幼なじみだったギャングのスキャンロンを追いつめていく。自宅を爆破され妻に怪我を負わされながら、ほとんど無表情で正面から突き進む正義漢警部マッキーグ。彼とは対照的に、部下の言葉一つにも神経を尖らすスキャンロン。そして、二人を利用しようとする判事や市の政治家たち。脛に傷を持つ人間達がうごめく、闇の世界を切り取ったバーネット・コーマックの舞台劇をクロムウエル他がリメイクしたノワール。

 

「黒い河」 DARK WATERS (1944年/B&W/90分)

監督:アンドレ・ド・トス

主演:マール・オベロン、トーマス・ミッチェル、フランチョット・トーン

☆海難事故で両親を失った石油財閥の相続人レスリー・カルバンは、安息の場所を求めまだ一度も会った事のない叔父と叔母を訪ねていく。その家は、アメリカ南部ルイジアナにある人里離れた河の入り江にある、今は使われてない砂糖プランテーションの中にあった。彼等は変わり者だったが、無害な人間に思えた。だが家を訪ねてくる白いスーツの客人や、薄気味悪い管理人などの存在が気になりだした頃、いつも木陰から現れる元使用人からこの家にまつわる不気味な物語を聞く。それからと言うもの、レスリーの心は次第に揺れ動いていき、夜になると不思議な声を聞くようになる。安息の地とはほど遠い環境の中で彼女は恐怖に慄き、狂気に陥っていく。彼女を救えるのは地元の若き医師だけだった。1940年代のルイジアナの深い沼地を舞台に描かれた陰惨なムードに満ちた幻覚的なゴシック・ノワールの佳作。

 

 

 

上映期間 3月28日(月)~4月2日(土)

 

 

上映スケジュール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入場料:1000円均一(当日券のみ)

※2本連続鑑賞1500円 3本連続鑑賞2000円 4本連続鑑賞2500円

5本連続鑑賞3000円

フリーパス(前売のみ)14000円

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