欧米クラシック・シリーズ53
マックス・オフュルス監督特集
2021年最初の欧米クラシック・シリーズは、戦前から戦後にかけて、ヨーロッパからハリウッドと大陸を股にかけて活躍した、女性映画の名匠マックス・オフュルス監督の代表作を特集でお届けします。
日本に材を求めた珍作『ヨシワラ』や、名花ジョーン・ベネット、シモーヌ・シニョレらの魅力を存分に引き出した作品群を存分にお楽しみ下さい。
例によって複数本割もございますので、ぜひご利用下さい!!
マックス・オフュルス Max Ophuls(1902年5月6日 - 1957年3月25日)
ドイツ帝国ザールブリュッケン出身。本名はマクシミリアン・オッペンハイマー(Maximillian Oppenheimer)。オフュルスという名はユダヤ人であることを隠すために用いた偽名である。1919年から舞台俳優として活動し、1923年からは演出家に転向した。その後、1929年にアナトール・リトヴァクの作品に脚本家として携わり、映画界に進出した。
1931年、短編『Dann schon lieber Lebertran』で映画監督としてデビューする。翌1932年には初の長編『Die verliebte Firma』と『Die verkaufte Braut』を製作した。1933年、ナチス台頭に伴い、フランスに亡命。その後イタリア、オランダなどで映画製作を行った後、渡米。ハリウッドでも5作品発表、1950年にフランスに帰国し、晩年はフランスを活動拠点にした。1957年3月25日、心臓病によりハンブルクにて54歳で死去。
上映期間 1月4日(月)~8日(金)
上映作品(全作品DVD上映)
『笑う相続人』Lachende Erben(1933年/独/B&W/72分)
監督:マックス・オフュルス
脚本:マックス・オフュルス フェリックス・ジャクソン
撮影:エドゥアルト・ヘッシュ
編集:ヘルベルト・フレデルスドルフ
音楽:クレメンス・シュマルスティッヒ
出演:ハインツ・リューマン イダ・ヴースト リーン・ダイヤーズ マックス・アダルベルト ユリウス・ファルケンシュタイン ヴァルター・ヤンセン
★シャンパン会社の経営者が死に、遺言状を聞きに親戚一同が集まる。無類の酒好きで甥のピーターもその一人。酒の会社など社会道徳に反すると考えている堅物のおじは、相続人は自分だと確信している。だが、公開された遺言状は驚くべき内容だった。遺産相続のために無理難題が課され、酒と恋を諦める羽目になった相続人のピーター。彼は恋を選ぶか、遺産を選ぶか・・・。貴重なオフュルスのウーファ時代の一本。『輪舞』で発揮したオフュルスのユーモアのセンスが光る。ハッピーな”軽さ”が過ぎたのか、1937年にはナチが上映禁止にした曰く付きの作品。ヒロインのジーナを演じるのはフリッツ・ラングの『スピオーネ』(1928年)に出演したオランダの女優リエン・ダイヤース。主演のハインツ・リューマンはドイツを代表する喜劇俳優。
上映日:1月4日(月)&7日(木)17時~
『永遠のガビー』La Signora Di Tutti(1934年/伊/B&W/72分)
監督:マックス・オフュルス
製作:アンジェロ・リッツォーリ
原作:サルヴァトーレ・ゴッタ
脚本:マックス・オフュルス ハンス・ウィルヘルム カート・アレクサンダー
撮影:ウバルド・アラータ
編集 フェルディナンド・M・ポッジョーリ
音楽:ダニエル・アンフィシアトロフ
出演:イザ・ミランダ ネリー・コラディ メモ・ベナッシ タチアナ・パヴローヴァ
★1930年代パリ。イタリア出身の映画女優ガビーのレコード「みんなの女性」がヒットする中、自殺を図ったガビーが手術台に運ばれる。麻酔で意識がもうろうとするガビーの回想が始まる。それは数々の男たちに愛されるが、意図せずに彼等を破滅に導いてしまう一人のファム・ファタールの驚くべきメロドラマであった・・・。ナチスを逃れ亡命したオフュルスがイタリアで監督した唯一の作品。大胆なフラッシュバック形式で語る女の回想は、後の傑作『忘れじの面影』や『歴史は女で作られる』を先駆ける。サウンド初期らしい斬新な音の使い方にも注目。『たそがれの女心』を思わせるダンス・シーン、ヒロインの眩暈を回転するカメラで表したオフュルスの移動撮影は圧巻。
上映日:1月6日(水)15時15分~
『ディヴィーヌ』Divine(1935年/仏/B&W/82分)
監督:マックス・オフュルス
脚本:コレット
撮影:ロジェ・ユベール
出演:シモーヌ・ベリオ ジョルジュ・リゴー ジナ・マネス フィリップ・エリア
★フランスの女流作家コレットが自らの著作『ミュージックホールの内幕』を脚色したオシャレな風俗喜劇。純情な田舎娘ディヴィーヌは友人に誘われ、憧れのパリのミュージック・ホールの踊り子になるのだが、想像と現実は大違い。怪しげな金粉男やレズ風なモガに迫られたり、牛乳配達の男に惚れられたり・・・。恋あり、サスペンスあり。オフュルスがこよなく愛した舞台裏の狭い空間を動き回る移動キャメラはすでに健在で、“戦前のフランス時代のオフュルス作品ではベスト”とトリュフォーが評した貴重な一作。
上映日:1月5日(火)&8日(金)17時~
『ヨシワラ』Yoshiwara (1937年/仏/B&W/102分)
監督:マックス・オフュルス
原作:モーリス・デコブラ
撮影:オイゲン・シュフタン
音楽:ポール·デッサウ
出演:ピエール・リチャード=ウィルム 田中路子 早川雪舟
★時代は19世紀半ばから20世紀初頭。大名の父が破産して切腹させられた娘のコハナは幼い弟を養育するため吉原に身売りする。密かにコハナに思いを寄せる車夫のイサムは人力車で彼女を吉原まで運ぶ。ちょうどその時、帝政ロシアのフリゲート艦が寄港し兵士たちは、吉原で歓楽の一夜を過ごそうと大はしゃぎである。勤勉な将校ポレノフは兵士たちの監督を命じられて同行するが、そこでコハナとの運命の出会いをする。芸者とロシアの海軍将校との不毛の愛を描いたサスペンス・メロドラマで、日本風のセットが突然ロマネスコ調に変わったり、舞子が全編フランス語で三味線を奏でたり、ヨーロッパ人のフィルターを通した日本人や日本文化像には驚かされるが、オフュルスの異色中の異色作である。当時オーストリアで歌手、女優として活躍していた田中路子がコハナを演じる他、嫉妬に駆られたイサムを早川雪舟が熱演。戦後公開された(1946年2月)初めてのフランス映画としても記憶される。
上映日:1月6日(水)&8日(金)18時40分~
『明日はない』Sans Lendemain (1939年/仏/B&W/82分)
監督:マックス・オフュルス
製作:グレゴール・ラビノヴィッチ
脚本:ハンス・ウィルヘルム ジャン・ジャコ アンドレ=ポール・アントワーヌ
撮影:ポール・ポルティエ ユージン・シュフタン
音楽:アラン・グレイ
出演:ウドウイージュ・フイエール ジョルジュ・リガー ダニエル・レコート マディ・ベリー ミシェル・フランソワ
★自滅的な運命の愛に生きるヒロインをエレガントに描いたオフュルス的メロドラマ。モンマルトルのキャバレーで踊り子として働くエヴリンは気品と美貌で一番の人気者。一人息子の母でもある。ある日、彼女は昔の恋人に再会する。三日間だけパリに滞在するという彼にキャバレーで働く姿を見せたくないとエヴリーヌは大芝居をうつ。エヴリーヌを演じるのは『双頭の鷲』で有名なウドイージュ・フイエール。運命に翻弄されながらも、愛の誠を貫くために嘘をつく女心が悲しい。私的リアリズムの光とのワールの影が重なり合った独特のオフュルスの世界が堪能できる。
上映日:1月6日(水)17時~、8日(金)15時15分~
『マイエルリンクからサラエヴォへ』De mayering à Sarajevo(1939年/仏/B&W/95分)
監督:マックス・オフュルス
脚本:カール・ズックマイヤー マルセル・モーレット カート・アレクサンダー アンドレ=ポール・アントワーヌ ジャック・ナタンソン
撮影:クルト・クーラン オットー・ヘラー
出演:エドウィジュ・フィエール ジョン・ロッジ ガブリエル・ドルジア エイメ・クラリオン ジャン・ドビュクール レイモン・エイムス
★オーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者フランツ・フェルディナン大公は、革新的な考えの持ち主だったため皇室から疎まれていた。チェコ人の伯爵令嬢ゾフィー・ホテイクと出会った大公は、恋に落ちるが身分の違う二人には多くの困難が待ち受けていた。ユダヤ系ドイツ人のオフュルスは1933年フランスに亡命、’38年にフランス国籍を取得した後の作品が本作で、あっと驚く驚愕のラスト・ショットまで、オフュルスの”究極の移動キャメラ”が冴え渡る史実を再現したドラマ。
上映日:1月5日(火)15時15分~
『無謀な瞬間』The Reckless Moment(1949年/米/B&W/83分)
監督:マックス・オフュルス
製作:ウォルター・ウェンジャー
原作:エリザベス・サンゼイ・ホールディング
脚本:メル・ディネリ ヘンリー・ガーソン ロバート・E・ケント ロバート・W・ソダーバーグ
撮影:バーネット・ガフィ
音楽:ハンス・J・サルター
出演:ジェームズ・メイソン ジョーン・ベネット ジェラルディン・ブルックス ヘンリー・オニール シェパード・ストラドウィック デヴィッド・ベア ロイ・ロバーツ
★ロサンジェルスの郊外バルボア。海外赴任の留守宅を切り盛りする中流家庭の主婦ルシアは、不良中年男にたぶらかされた娘を守ろうとする一心で無謀な行動に出てしまう。事件をネタにルシアをゆするチンピラのドネリーだが、次第に淡い恋心を抱く。だが、ドネリーの相棒ネイグルは本物の悪党だった・・・。ハリウッド時代最後のオフュルス作品は、ノワール・サスペンスに始まり、女性メロドラマで終わる異色作。ヒロインの主婦を情感豊かに演じるのはジョーン・ベネット、ジェームズ・メイソンが彼女に惹かれるやくざな男を繊細に表現する。
上映日:1月4日(月)&7日(木)15時15分~
『輪舞』La Ronde(1950年/仏/B&W/93分)
監督:マックス・オフュルス
原作:アルトゥール・シュニッツラー
脚本:マックス・オフュルス ジャック・ナタンソン
撮影:クリスチャン・マトラ
音楽:オスカー・ストラウス
出演:ダニエラ・ジェラン シモーヌ・シニョレ ダニエル・ダリュー アントン・ウォルブルック セルジュ・レジアニ シモーヌ・シモン オデット・ジョワイユ ジャン=ルイ・バロー イザ・ミランダ ジェラール・フィリップ
★娼婦が兵士に恋をし、逃げ出した兵士は小間使いに走る。小説家でもある小間使いの主人は彼女を弄んだ挙句、上流社会の人妻に近づく・・・・。狂言まわしの解説と共にウィーンを舞台に恋の輪舞が繰り広げられるというシュニッツレルの小説の映画化作品。
上映日:1月4日(月)&7日(木)18時40分~
『快楽』La Plasir(1952年/仏/B&W/94分)
監督:マックス・オフュルス
原作:ギイ・ド・モーパッサン
脚本:マックス・オフュルス ジャック・ナタンソン
撮影:クリスチャン・マトラ フィリップ・アゴスティーニ
音楽:ジョー・エイオス モーリス・イヴェン
出演:クロード・ドーファン ギャビー・モルレー マドレーヌ・ルノー ダニエル・ダリュー シモーヌ・シモン ダニエル・ジェラン ポーレット・デュボスト ジネット・ルクレール ミラ・パレリ ピエール・ブラッスール
★モーパッサンの原作による3話からなるオムニバス映画。第一話の「仮面の男」は、夜遊びする夫に手を焼く妻の話。第二話の「メゾン・テリエ」は、都会の喧騒を逃れて田舎で遊ぶ娼婦たちが見事なカメラワークで描かれている。第三話ではモデルのお蔭で世に出た画家が逆に彼女にに苦しめられるまで。
上映日:1月4日(月)13時30分~、5日(火)18時40分~
スニークプレビュー
上映日:1月5日(火)~8日(金)13時30分~
入場料:1300円均一(当日券のみ)
※2本連続鑑賞2400円 3本連続鑑賞3500円
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